失われた断片・グラスとリチャード
「そばで・・仕事をしながら
・・覚えたのか?」
「はい」

なぜ、できるのに・・隠すのか?
リチャードの疑問だった。

読み書きや、計算ができれば、
もっとよい仕事につけるはずだ。

「できることをなぜ・・
言わなかった?」

リチャードの目の前に立つ、
グラスは
「うーーーん、困ったな」というように目を泳がせた。

「その、お仕事が、増えてしまうので・・・手紙の代筆とか、
買い物の支払い計算とか、
いろいろ頼まれてしまうので、
私は、その、
お断りができませんし」

リチャードは、杖の先端で、床を叩いた。

「断れば、打たれたり、殴られたりするのか」

「文字や計算が、間違っても・・
そうです・・」
グラスは、体をすくめた。

掃除や洗濯以外は、できないように、自分の能力を隠す事・・
グラスなりの、サバイバルスキルだったのか。

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