失われた断片・グラスとリチャード
「私は、ハモンドと言います。
リチャードとは、今度の舞台で、
一緒に仕事をする仲でしてね。
私は、舞台の演出家ですが、
お見知りおきを」

グレイスは、少し戸惑い気味だが、うなずいて、笑顔らしき表情を見せた。

「これは、美しい・・瞳ですね。
私は舞台の演出を、やっているので、色々な人と会いますが、
エキゾチック?
すごく神秘的だ」

ハモンドは、目が早い。
そして、リチャードの店の常連だ。
リチャードは、咳払いをした。

「これから彼女を、
ホテルまで送らなくてはいけないのだが」

ハモンドは、ニヤリと笑い

「どうですか?
上で公演関係のパーティをしているのですが、
ぜひとも、ダンスのお相手を」

そう言って、立ち上がり、
グレイスに手を差し伸べた。

グレイスも、条件反射のように反応して、すぐに立ち上がったが、次にどうすればいいか、リチャードの顔を見た。

まずい、まずい、まずい・・・
ハモンドは、押しが強い。

すぐに手を出す。
女好きだ。
女優とも浮名を流す奴だ。
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