失われた断片・グラスとリチャード

リチャードは慌てたが、
顔に出さないように、意識をして平静を装った。

阻止するには、どうしたらいいか・・考える間もなく

「リチャード、
少しばかり、このお方を借りるよ」

「あなたのように美しい方を、
エスコートできるのは、無上の喜びです」

ハモンドは、褒め言葉をセリフのように口にした。

ハモンドが、軽く肘を曲げたので、困ったようにグレイスは、
リチャードを見た。

リチャードは目を細め、
額にしわを寄せて、うなずいたので、グレイスはその肘に、そっと手を添えた。

ハモンドはにこやかに、
グレイスをエスコートして、連れて行ってしまった。

貴族の娘のように、振る舞え・・・
そう言ったのは、リチャードだ。

「まったく・・!!」
リチャードは、杖をついて、
なんとか、二人の後を追った。

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