失われた断片・グラスとリチャード
「私の助手を、やってもらう。
手紙の整理とか、清書、口述筆記とか、
お前なら、できるはずだ」
リチャードの仕事は、
舞台をやるようになって、忙しさが増していた。
でも、それは口実であって、
グレイスを、自分のそばに置いておきたいと思ったのだ。
「まず、この原稿の清書をして欲しい。
今度の舞台の脚本だが」
そう言って、
チェストから、一束の書類を取り出した。
「フランス語ができるのなら、問題ないだろう」
自信なさげに首をかしげている、
グレイスの目の前に、書類を無造作に投げた。
それから、
リチャードは、容赦なく言った。
「私は夜まで、もうひと眠りする。起こすな。
起きたら、その原稿チェックをするから」
「わかりました」
グレイスは、スカートの裾をつまんで、貴族の娘のように、頭を下げた。
リチャードはうなずくと、
杖をついて居間から出て行った。
悪くない、合格点だ。
リチャードは、満足していた。
手紙の整理とか、清書、口述筆記とか、
お前なら、できるはずだ」
リチャードの仕事は、
舞台をやるようになって、忙しさが増していた。
でも、それは口実であって、
グレイスを、自分のそばに置いておきたいと思ったのだ。
「まず、この原稿の清書をして欲しい。
今度の舞台の脚本だが」
そう言って、
チェストから、一束の書類を取り出した。
「フランス語ができるのなら、問題ないだろう」
自信なさげに首をかしげている、
グレイスの目の前に、書類を無造作に投げた。
それから、
リチャードは、容赦なく言った。
「私は夜まで、もうひと眠りする。起こすな。
起きたら、その原稿チェックをするから」
「わかりました」
グレイスは、スカートの裾をつまんで、貴族の娘のように、頭を下げた。
リチャードはうなずくと、
杖をついて居間から出て行った。
悪くない、合格点だ。
リチャードは、満足していた。