失われた断片・グラスとリチャード
リチャードの断片
その言葉に
グレイスの体に強い緊張が走り、動きが止まった。
リチャードは、かすれた声で言葉を続けた。
「私が20歳の時だった。
貴族の娘に、一目ぼれをした。
エリザベスと言って、
かわいらしい、よく笑う娘だった」
リチャードはグレイスを抱く腕に、少し力をこめた。
グレイスの息使いは荒いが、
頭が垂れて、動かなくなった。
「エリザベスは、
グロスター家より、格上の貴族の娘だった。
それで、彼女の父親は、
私と付き合う事を、大反対した。
私が、正式な嫡男ではなく、
母親も娼婦であったからな。
当然と言えば、当然だが」
リチャードは黙り込み、
顔を上げて、窓の外を見た。
もう、陽が暮れようとして、
西日が、窓から差し込んできている。
「私もエリザベスも、まだ若くて、愛だけが、真実だと思っていた。
だから、駆け落ちをしても、
その愛を貫こうとした。」
窓枠が、十字架のように、絨毯に影を落としている。
グレイスの体に強い緊張が走り、動きが止まった。
リチャードは、かすれた声で言葉を続けた。
「私が20歳の時だった。
貴族の娘に、一目ぼれをした。
エリザベスと言って、
かわいらしい、よく笑う娘だった」
リチャードはグレイスを抱く腕に、少し力をこめた。
グレイスの息使いは荒いが、
頭が垂れて、動かなくなった。
「エリザベスは、
グロスター家より、格上の貴族の娘だった。
それで、彼女の父親は、
私と付き合う事を、大反対した。
私が、正式な嫡男ではなく、
母親も娼婦であったからな。
当然と言えば、当然だが」
リチャードは黙り込み、
顔を上げて、窓の外を見た。
もう、陽が暮れようとして、
西日が、窓から差し込んできている。
「私もエリザベスも、まだ若くて、愛だけが、真実だと思っていた。
だから、駆け落ちをしても、
その愛を貫こうとした。」
窓枠が、十字架のように、絨毯に影を落としている。