失われた断片・グラスとリチャード
「わかっている。
無理を承知で頼んでいる。
簡単でいい」

封筒の厚み・・・
それを見て、聖職者はうなずいた。

「わかりました。
すぐに準備をしましょう。
こちらへどうぞ」

「そう、彼女には・・
何か花を・・」

聖職者は、急いで
祭壇に飾ってある百合の花を、
一本引き抜いた。

「マドンナリリーです。
結婚式には、ふさわしいでしょう」

娘は恥ずかし気に、
でも、うれしそうに微笑んで、
その百合を受け取った。

数本のろうそくが灯り、香がたかれる。
そして祭壇の前で、祈りがはじまった。

「誓いの言葉を、・・・
私の言葉を、復唱してくれればいいです」

聖職者は、手慣れたように、
二人に向かって言った。

「汝(なんじ)・・・
健やかな時も、病める時も、喜びの時も・・・・」

聖職者の朗々とした響きが、
天井まで広がる。

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