失われた断片・グラスとリチャード
「指輪の交換を・・」

男は、アイスブルーの目を細めて、
額にしわを寄せた。

「まだ、準備できていないのだが」
「では、これを使ってくださいね」

娘が百合の花と一緒に持っていた、細長く、しなやかなつる草を2本取り出した。

「私の指に結んでください」

娘は少し笑って、左手を差し出して言った。
男が何とか、娘の左手の薬指に
つる草を巻いた。

娘は、男の左手の薬指に、同じようにつる草を結んだ。

「では、キスを」

聖職者が促したので、
男は軽く娘の唇に、キスをした。

「それでは、最後に宣誓書にサインを」

聖職者が、大判の本を持って来た。
夫となる人、その欄に、
<リチャード・グロスター>
と、男がサインをした。

次に、
娘にペンを渡して、微笑んだ。
妻となる人、
<グレイス・グリーン>、
娘はそうサインをした。

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