俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
間もなくすれ違った自転車は「チリン」と迷惑そうにベルを鳴らし、私たちから離れていった。
「ご、ごめんなさい」
おずおず体を離し、私は俯いた。
助けてくれたのはわかっているけれど、深澄さんの目をきちんと見られない。
「まったく、危なっかしいから掴んでろ」
スッと手を差し出され、私は視線を泳がせて戸惑う。
不注意だった自分が悪いとはいえ、深澄さんと手を繋いで歩くの、目立つから嫌なんだよな……。
「ああもう……お前、ホント腹立つ」
躊躇う私にしびれを切らしたらしい深澄さんは、無理やり私の手を取って歩きだす。当然のように指を絡ませてくるが、腹が立っている割に握り方は優しい。
手を引かれるままに歩いていると、次第に胸がトクトク優しい音を立てるのを感じた。
目立つから嫌だったはずなのに、今は離したくないかも……。
重なり合う手のぬくもりに集中しながらそんなことを思った時だった。
「ねえあれ、兄妹かな? お兄さん超イケメン」
「えー、似てないしカップルって感じでもないからパパ活じゃない?」
すれ違った若い女性ふたり組がそんな話をしていて、私はパッと深澄さんの手を離した。