俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「俺たちはもう夫婦なんだ。迷惑なんて概念はないだろ。俺はお前と手を繋いで歩きたいからそうする。他人の目なんてどうだっていいし、そんなものより隣を歩くお前をしっかり見ていたい」
夫婦の間に、迷惑なんて概念はない――。
深澄さんの言葉が一般的に賛同されるものかどうかはわからないけれど、少なくとも私は目から鱗が落ちる思いがした。
生きていくにはどうしても、お互いに迷惑をかけて、かけられての繰り返し。夫婦なんてその最たる関係だと思うけれど、毎日のようにその〝お互い様の迷惑〟を数えていたら、きっとキリがない。
迷惑の概念をなくして、困ったときには素直に寄りかかり、逆の立場の時は迷わず手を差し伸べられる。そんな関係になれたら確かに理想的だ。
「だから、この手を離す必要はなし。わかったな?」
「……はい」
確かめるように瞳を覗かれ、私はこくりと頷いた。
深澄さんは満足そうに口角を上げ、私の手を大切そうに握り直す。
「あと、いい加減名前で呼べよ。結婚したのにいつまで深澄さんって呼ぶつもりだ?」
「えっ? あの、それは暮らしに慣れていく過程でおいおい……」