俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「ダメだ。そうやっていつまでも逃げる気だろう。ちなみに俺の下の名前を知らないなんて抜かしたら怒るからな」
ジロッと睨まれて、肩をすくめる。
これは、腹をくくって呼ばないとダメっぽい……。
私は口をもごもごさせながら、恥ずかしいのを堪えてなんとか声を押し出す。
「た、鷹矢さん……?」
「おお、ちゃんと知ってたか。えらいえらい」
ちょっと偉そうに言いながらも、鷹矢さんの横顔はなんとなくうれしそう。
痛みを覚えていたはずの胸はいつの間にか温かく、穏やかなリズムで揺れていた。
ベッドを購入したその日から、鷹矢さんとの生活は順調にスタートした。
ある程度想像はしていたものの、お互いの勤務時間は本当にバラバラ。
入れ違いで出勤だったり、同じ家にいてもどちらかが寝ていたりする。
私も彼も無理に時間を合わせようとはしないが、少しでもふたりでゆっくり過ごせそうな時にはお茶やコーヒー、時にはお酒を飲みながら、お互いの仕事や飛行機に関する話をした。