俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
父は私が航空整備士になることにはずっと反対で、航空専門学校の学費を出してくれたのも母。
就職が決まれば父もさすがに折れるかと思いきや、今でもなお辞めさせようとしてくるから、困っているのだ。
「なるほど。同居家族が味方じゃないってのはつらいな」
「そうなんですよ。いっそ家を出ちゃおうかな……」
実家は職場から近いことが利点だったので、今まであまり真剣にひとり暮らししようと考えていなかった。
でも、整備士の仕事が面白くなればなるにつれ、取得したい資格も増えていく。健康な五十代の父を世話するより、もっともっと勉強に時間を費やしたいのに……。
「……ふうん。おもしろい話を聞いた」
ふと、背後で男性の声がした。パッと振り向くと、ラグランシャツにブラックデニムというラフな服装の深澄さんがワイングラスを片手に立っている。
パイロットの制服も似合うけれど、カジュアルな服でさえ彼が着ると洗練されたように見えるから不思議だ。
「いいのか? 深澄。彼女たちを放っておいて」
そう言って隣のテーブルをちらりと見たのは最上さんだ。女性たちがジトッとした眼差しでこちらを見ている。