俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「そういう意味じゃない。……軽々しく俺の煩悩をぶつけられないなって、自分を戒めてるだけだ」
どうしてか、鷹矢さんは疲れたような息を吐く。
話の流れがよくわからず、私は思わず彼に尋ねた。
「煩悩って……あの、百八つあるっていう?」
「あのなぁ、今この状況で男が抱く煩悩なんてひとつしかないだろ?」
そっと体を離した彼に、瞳を覗かれる。彼は苦笑しながらもその目に熱を湛えていて、そういうことに疎い私ですら、彼の言う〝煩悩〟の種類になんとなく察しがつく。
でも、こんなに色気のない私に、百戦錬磨の鷹矢さんがそんな気を起こすとは考えにくい。
ただからかっているだけなのだとしたら、卑怯だ。
それがわかったところで、この胸の高鳴りは止まってくれないのに……。
「鷹矢さん」
私はいつもの仕返しのつもりで、彼の唇にそっと不器用なキスを押しつけた。
鷹矢さんは驚いているのか、微動だにせず固まっている。私はすぐに恥ずかしさに耐えられなくなり、唇を離した。
「……光里?」
「す、すみませんっ。魔が差しただけなので、お気になさらず!」