俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
疑惑の一夜と上司の告白
鷹矢さんとの微妙な気まずさが改善しないまま、迎えた翌日の夜。
遅番だった私は最上さんとともに、駐機場で機体の整備にあたっていた。いつもは国内線担当だが、今日は実地研修のために国際線を担当している。
国内線よりも整備にかけられる時間は長いが、一回で長距離、長時間を飛ぶ機体の整備なので、別の意味で神経を使う。
到着機に車止めをセットすると、ノーズギアのイヤホンジャックにインターフォンをつけ、無線でコックピットにいるパイロットに機体の状態を確認する。
この機体を羽田まで操縦してきた機長の服部さんが無線に応じ、大きなトラブルがなかったことを確認。
無線を切ろうとしたら、服部さんが『ちょっと待って』と私を呼び留める。
『もしかして、きみが涼野光里さん?』
「……そうですけど」
早く次の作業に移りたいので、受け答えがついそっけなくなってしまった。
服部さんは鷹矢さんよりも三年先輩の機長。甘いマスクでちょっぴり軽薄な印象だけれど、鷹矢さんの話によると、その確かな操縦技術やとっさの判断力は、ベテラン機長にも引けを取らないのだとか。
ちなみに既婚者で、独身の頃は鷹矢さんのようにCAから言い寄られていたらしいけれど、結婚してからぱたりと落ち着いたらしい。