俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
気まずいと思っていたのは私だけだったのだろうか。 飄々としている鷹矢さんは、さっさと方向転換してまたコックピットに戻っていく。
「なんなの……」
こんなところでキスするなんて、魔が差したどころの話じゃない。
彼のことが好きだと自覚したばかりなので、胸がかき乱されて仕方がなかった。
それでも最上さんがコックピットから戻ってきて出発準備の段階に入るとまた整備士のスイッチが入った。
しかし、離陸する機体に手を振っているとやっぱり鷹矢さんを意識してしまい、胸は勝手に騒がしくなる。
次に会えるのは三日後……。今までよりは、素直に彼と向き合えるといいんだけど。
ほんのり感傷に浸りつつも、見送りが終わればまた次の到着機の点検と整備が待っている。
未だにキスの余韻で火照る唇をきゅっと噛みしめ、気持ちを切り替えた。
翌日から翌々日にかけては夜勤だった。朝の八時に仕事を終えた後、前に鷹矢さんと待ち合わせをした空港内のカフェにひとりで足を運ぶ。
あの時、ここで勉強をすると捗ると気づいたので、今日も少し勉強してからマンションに帰るつもりだ。
前回同様ホットのラテを手に窓際のカウンター席に向かうと、同じく夜勤明けだったふたりの先輩の後ろ姿が見えた。