俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「だから見ない方がいいと言ったんです。この写真が真実とは限りませんし、ハッシュタグなんていくらでも好きなように書けます。ここに写っているものをすべて丸のみしたら、彼女の思うツボです」
呆然とする私の手からスマホを奪い、信濃さんが静かに諭す。しかし、その言葉は右から左へ抜けていく。スマホを取られたところで、衝撃的な写真は脳裏に焼き付いて離れなかった。
いくら見栄を張った投稿の多い高城さんでも、実在しないものは撮影できない。
鷹矢さんと合意の上で一夜を共にしなければ、あんな写真は存在しないはずでしょ……?。
「ダメだ。聞こえてねえ」
「……この状況、一応最上さんにも報告しときますか」
信濃さんが自分のスマホを操作する隣で、石狩さんがおもむろに立ち上がる。そして私の背を押し無理やり椅子に座らせると、ポンと肩に手を置いた。
「元気出せよ涼野。離婚したらまた俺たちが遊んでやっからよ」
「石狩、慰めの言葉にしてはデリカシーがなさすぎです」
いつもなら面白いと思うふたりのやり取りを、クスリとも笑えない。
そんな私をますますふたりは気の毒そうに見つめ、朝の明るいカフェの中で私たちのいる場所だけが、異様に重苦しい雰囲気だった。