俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

「やった……!」

 一気に四科目合格するのは難しいと聞いていたから、できるだけ多くクリアしておきたいなと思っていたけど、まさか全部合格だったなんて。

 このあと実地試験にも合格しなければならないけれど、うれしい……!

 合格通知を胸に抱いて、歓喜と安堵の混じった息をつく。

 鷹矢さんにも報告したいけど……今の状況では、喜んでくれるかどうかわからない。

『受かるよ、お前なら』

 根拠もないのに自信満々にそう言ってくれた時のことが、なんだか遠い昔のよう。

 うれしい通知を受け取ったはずがまたすぐに切なくなって、私はリュックに封筒ごと合格通知をしまうと、重い足取りでマンションを出た。

 空港までモノレールを使い、敷地に入ると格納庫に併設された運航整備部のビルに向かう。

 この建物内にある自習室ならほとんど整備士しか来ないので、鷹矢さんに会う心配もない。そこで、遅番の最上さんが来るまで勉強するつもりだ。

 ひとりで自習室手前の廊下を歩いていたら、後ろから聞き慣れた渋い声がした。

「あれ? ……ずいぶん早いな涼野」
「あっ、最上さん……! おはようございます! 最上さんも早いですね」

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