俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
仕事中の最上さんは基本的にいつも通りだったので、あまり意識することなく仕事に集中することができた。
最終便の整備までを終えて工具を片付けると、ホッと肩の力が抜ける。
夜勤担当者に必要な引継ぎを終え格納庫と社屋のビルを繋ぐ出入口に向かって歩いていると、後ろから最上さんが追いかけてきた。
「涼野。遅いから送る」
「えっ? 大丈夫ですよ。いつものことですから」
「迷惑か?」
横に並んで歩きながら、顔を覗かれる。仕事中は一線を引いている感じだったのに、今はなんだか距離が近い気がして戸惑う。
「いえ、まさか……」
上司に迷惑だなんて言えるはずがない。それがわかっていて聞いているんだとしたら、最上さんもちょっぴりずるい人だ。
断れないまま出入口の扉をふたりで通り抜け、社屋に入ったところで最上さんが強引に話を進める。
「ならいいだろ。心配しなくてもまっすぐ家まで送る。ちなみに、今日はどこへ帰るんだ?」
「今日は……」
困り果てた私が目を伏せ、言葉を探しあぐねていた時。すぐそばの廊下の壁に背を預けて立っていた人物が、いきなり私たちの前に立ちはだかった。