俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

「〝今日は〟ってなんだよ。お前が帰る家はひとつしかないだろ」

 美しい眉を不快そうにひそめたのは、あろうことか鷹矢さんだった。

 シドニーから帰ってきたのは午前中のはずなのに、なぜこんな時間に私たちのオフィスにいるんだろう?

 絶句して瞬きを繰り返していると、最上さんが私を背にかばうように一歩前に出た。

 最上さん……?

「なんの真似ですか?」

 鷹矢さんの怪訝そうな声が聞こえ、思わず最上さんの脇から顔を出してふたりの様子を窺う。

 シドニーから帰ってきたばかりだからか、深澄さんがどことなく疲れた顔をしているのが気になり、胸がきゅっと締めつけられる。

「それは涼野の台詞だろう。CAにあんな写真を取られておいて」
「ちょっと、最上さん……っ」

 いきなりその話を持ち出さなくても……!

 最上さんが突然核心に触れるものだから、思わず咎めるような声をあげてしまう。

「写真……?」

 鷹矢さんは心当たりがなさそうに眉根を寄せた。

 彼は高城さんのSNSを知らないのだろうか。知らないからって、なにもしていないことにはならないけれど……。

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