俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
尋常じゃないほど汗をかき虚ろな目で返事をした鷹矢さん。私は両手で彼を支えながらゆっくりその場に寝かせ、楽な姿勢を取らせる。
それから、そばでぼうっと立ったままの最上さんに告げた。
「最上さん、救急車をお願いします!」
「あ、ああ」
我に返ったようにポケットを探った最上さんは、スマホを取り出すとすぐに119番にコールし、私たちの元にしゃがみこんで鷹矢さんの容体を電話の相手に説明する。
「深澄さん、大丈夫ですからね。すぐ救急車が来ます!」
励ますように声を掛けると、鷹矢さんは苦しげな呼吸を続けながらも小さく頷く。
意識も呼吸もあるので命に別状はないと思うけれど、どうして急にこんな症状が?
彼の手を握り状態を注意深く観察しながら、私自身も不安でいっぱいになる。
フライト中は大丈夫だったんだろうか。万が一重大な病気だったら、これからパイロットの仕事は……?
あんなに飛行機が好きで、自分の仕事に誇りを持っている彼がもしコックピットに入れなくなったとしたら……。
つい悪い方向へと思考が進みそうになり、激しく首を横に振った。
そんなことになるわけない。鷹矢さんはきっと大丈夫に決まっている。
「頑張って! もうすぐ到着しますからね!」
鷹矢さんだけでなく自分のことも奮い立たせるように、私はとにかく彼の手をギュッと握りしめ、声をかけ続けた。