俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

「たぶん、肋間(ろっかん)神経痛かなにかだと思うが……気になるから、機長に報告してくる」

 今回フライトを共にしているのは、敬愛する亘キャプテンだった。

 羽田からの往路は彼が操縦を担当し、俺は復路を担当する予定になっている。

 ステイ先にはスタンバイのパイロットがいないため、このような体調不良は、本来避けなくてはならないもの。

 しかし、なってしまったものは仕方がない。飛行中に悪化してからでは遅いし、万が一操縦不可の判断が下された場合、代わりのパイロットを呼び寄せるか、担当便が欠航になるか……どうなるにせよ、早めに各所に連絡を取らなければならない。

 俺はベッドから下り、近くの椅子に掛けてあったシャツを羽織る。

 八月のシドニーは、日本の季節とは真逆の冬。外は寒いはずだが、部屋の空調と酒を飲んでいたのとで暑くなったのか、自ら脱いだようだ。

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