俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
悪いところがあるならさっさと治して、仕事で皆に恩返ししなければ。
帰国を命じられた俺はその日のうちに帰国便に乗り、夜遅く、羽田に到着した。
翌日の朝一番に病院を受診することにして、とりあえずマンションへ帰ろうとタクシーに乗り込む。
「どちらまで?」
「ええと……」
運転手に聞かれ、俺はしばし考え込んだ。
予定より一日早くマンションに帰った俺を、光里は不思議がるだろう。しかし、ステイ先で胸の痛みを感じ、コックピットにも入れず帰ってきたと正直に伝えるのがなんとなく憚られる。
無用な心配をかけたくないというのもあるが、航空整備士の仕事に誇りを持つ光里が魅力的に思っているのはパイロットの俺なのだ。
そんな俺が飛べなくなったと知ったら彼女はどう思う?
光里をがっかりさせたくない。現状を伝えるにしても、病院できちんとなにかしらの診断を受けてからの方がいいだろう。帰るのはそれからにしよう。
俺はタクシー運転手に適当なホテルの名を告げ、シートに深く身を預ける。
目を閉じ、自然と想像したのはコックピットの景色だ。