俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
離陸時の操作をイメージしながら空中に手を伸ばし、いくつものスイッチを操作しながら、小声でブツブツと、機長や管制とのやり取りを呟く。
「Ready for departure.」
準備完了の合図を口にして、滑走路へと進む。
離陸の許可が下りると、操縦桿を引いて機首を上げる。機体が無事に地上を離れ、高度が安定したところでオートパイロットに切り替えた。
そんなイメージが頭の中に広がると、安心したように目を開く。
すると運転手が訝しげにバックミラーからこちらを見ているのに気づき、気づかれぬように口元を隠しながら苦笑した。
そりゃ、いきなり目をつぶった乗客がブツブツ独り言を言って手を動かし始めたら不気味だよな。
……でも、俺にはこれしかないんだ。
パイロットは子どもの頃から夢見てきた仕事。念願の機長昇格試験ももうすぐ。
こんなところで立ち止まるわけにはいかない。
目を細めて車窓を流れる夜景を眺め、俺は改めて自分の中にある仕事への情熱を確かめた。