俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「言わなかったら?」
「お仕置きにキスする」
「どっちにしろキスするんじゃないですか……!」
「そうだよ。ほら早く、観念しろ」
小さな唇をギュッと噛みしめて躊躇していた光里だが、しばらくして、蚊の鳴くような声で言った。
「好き、です……」
待ち焦がれていたその言葉が優しく鼓膜を揺らした瞬間、光里への愛おしさで胸がいっぱいになった。
たまらず彼女の唇を塞ぐとチュッと音の立つキスをして、はぁっと吐息をこぼす。
「……また発作が起きたらお前のせいな」
「えっ?」
「ほら、わかるだろ? 暴れてんの」
光里の手を取り、入院着のガウンの上から自分の胸にぴたりと当てる。
彼女のせいで高鳴る鼓動をその手に伝えると、光里は目を丸くした。
「私より速いかも……あの、冗談じゃなくて、本気で苦しくないですか?」
「平気だよ。……お前が好きすぎるだけ」
耳元に唇を寄せ、内緒話のように囁く。
光里は耐えきれなくなったようにパッと俺から離れ、頬を冷やすように両手で挟んだ。
「も、もう……っ。私まで発作起こしますって!」
その初心なそぶりにクスクス笑っていると、目を覚ましたばかりのとき弱音を吐いていたのが嘘みたいに、心が軽くなっていた。
今回のことは、パイロットとしての道を順調に歩んできた俺に初めて立ちはだかった、大きな壁。ひとりでは途方に暮れて、乗り越えられなかったかもしれない。
でも、光里がそばにいるから……前向きに乗り越えてみようと思える。
「ありがとな」
改めて感謝を伝えると、光里は照れたように笑う。
その愛しい笑顔を守るためにも必ず復帰してみせると、ひとり心に誓った。