俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
素直になることを覚えた日
鷹矢さんの病気が発覚してから、一カ月弱。完全に治癒しているかどうかの検査を受けに、彼と病院を訪れた。
いくつか検査を受けた後で診察、という流れだったけれど、診察室に付き添われるのは鷹矢さんのプライドが許さないらしい。
番号が呼ばれると彼はひとりで診察室に入っていき、私はベンチでソワソワと彼を待つことになった。
そばにあったマガジンラックからファッション雑誌を手に取ったものの、まったく集中できない。
心ここにあらずの状態を続けること十分あまりで、ようやく彼が診察室から出てきた。
「ど、どうでしたか……?」
立ち上がって寄り添い、小声で尋ねる。鷹矢さんは私の頭にポンと手を乗せ、反対の手に持っていた封筒を私の前に掲げた。
「完全に治ってるってよ。治癒証明書ももらった」
「よかった……。」
「これで一応は仕事に行ける。地上から恨みがましく空や飛行機を眺める日々にはなると思うが、軟禁状態で家にいるよりはマシだ」
ため息交じりに言っていても、彼の表情は明るい。
復帰への第一歩を踏み出すことができて安心しているのだろう。
家で我慢我慢の生活を続けていた彼を一番そばで見ていた私としても、本当にうれしい。
そんな気持ちを伝えるように、珍しく自分から彼の手を握った。