俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
今回は手間のかかる部品の交換や修理の必要はなかったため、時間に余裕を残して点検を終える。
一緒に作業にあたっていた上司が書類に必要事項を記入していたその時、コックピットに繋がるタラップからひとりのパイロットが下りてきた。
彼は機長と共にこの便を担当する副操縦士――そして、私の契約上の旦那様だ。
書類の記入、そして責任者のサインまで終えた上司が彼と入れ替わりのようにコックピットに向かって行くのを見送ると、彼とふたりきりになる。
なるべく意識しないように、つとめて普通に話しかけた。
「外部点検ですか?」
出発前に機体のチェックをするのは整備士だけでなく、パイロットも自分の目で機体に異常がないかを確認する。彼はそのために下りてきたのだと思ったのだ。
「いや、それはもう終わってる」
「じゃあどうして外に――」
再度尋ねようとしたら、ぐっと腕を引かれてエンジンの裏側に連れ込まれる。
戸惑って彼を見上げたと同時に、身を屈めた彼が素早く口づけを落とした。
「なっ! こんな所でなにして……っ!」