俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「こんにちは。今、夫を待っているところで」
意外な場所で先輩に会う偶然に驚きつつ、軽く挨拶する。
かっちりしたジャケットを着た私服姿なので、いつもと印象が違う。
しかも、彼の隣には女性がおり、親し気に腕を絡ませている。
もしかして、デート中……?
ドキッとして遠慮がちに女性の顔を見たら、見覚えのあるその美人はとっさに私から目を逸らした。
こ、この人……高城さん?
「待たせたな、光里――って、なんでお前らがここに?」
フロントから戻ってきた鷹矢さんが、信濃さんと彼女を交互に見て怪訝そうにする。
実は、少し前に高城さんはスカイイーストのCAを自主的に退職していた。
鷹矢さんのお見舞いにも訪れた男性CAを中心に、彼女の行き過ぎた指導についての告発があり、とても仕事を続けていられる状況ではなくなったらしい。
いつの間にか例のSNSアカウントも消えていたので、今日こうして会うまで彼女の存在はすっかり忘れていた。
高城さんはますます居たたまれない表情になり「行きましょうよ……」と信濃さんの腕を引っ張る。
しかし、信濃さんはそれに応じず私たちに向けてにっこり微笑んだ。