俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 ぴくっと、高城さんの肩が震える。

「元々、パイロットばかり崇めて整備士を馬鹿にしていた辺り浅はかだと思ってたけど、気が強くて根性のあるお前は、CAとしてもっと上に行くもんだと思ってた。だから残念だ。謝罪すべき相手と目を合わせることもしない、お前を心配してくれる恋人に代わりに謝らせても平気な顔、その上結婚に逃げて生活の面倒まで見させるつもりだなんてな」

 鷹矢さんが冷たい言葉を浴びせた瞬間、初めて高城さんが顔を上げ、キッと彼を睨みつける。

「私だってここで終わるつもりはありません……! もっと条件のいい会社で、CAのトップに返り咲いてみせます。今は、その……充電期間です!」

 悔しそうに顔を真っ赤にした高城さんが、鷹矢さんに向けて言い放つ。

 彼は彼で挑発的な態度を崩さず、鼻で笑いながら言った。

「はっ。トップとは大きく出たな。どうせ無理だがせいぜいやってみろ」
「深澄さんがこんなに性格の悪い人だとは知りませんでした……! 失礼します!」
「ちょっ、翔子……。すみません、本当に。いつか絶対に謝らせますので」

 ぷりぷりしながらこの場を離れていく高城さんを、信濃さんが慌てて追いかける。

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