俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
父との決別
深澄さんの住まいは、都心に近いベイエリアに建つ地上五階建ての低層レジデンスだった。
羽田空港まで車なら二十分弱、直通のモノレールを使えば十分で到着し、通勤にも便利な立地だ。
エントランスにはコンシェルジュが常駐し、警備員が二十四時間体制で警備にあたっている。
部屋に向かうまでの共用部分はホテルのような高級感で、全身少年スタイルの私は場違い感が半端なかった。
肩身の狭さを感じながらエレベーターに乗り込み、深澄さんの長身を見上げる。私が一五六センチだから、一八五はありそう。長い脚がコックピットで邪魔にならないのかな。
視線に気づいた深澄さんも、似たようなことを思ったらしい。私をまじまじとを見下ろして呟いた。
「それにしてもお前、小さいな」
「み、深澄さんが大きすぎるんですよ」
「まぁでも別に――」
話しながら、深澄さんがパッと私の頭からキャップを取る。その直後、身を屈めた彼の美しい顔が目の前に迫ってきた。
今にも唇同士が触れそうになり、驚きで目を見開く。
きゅ、急になにを……!?
「キスをするのに不都合はないな」
間近で囁いた彼は、実際に口づけすることはなく私から離れていく。それから雑な動作でキャップを私の頭に戻すものだから、目元まで隠れてしまった私は慌ててキャップのつばを引き上げた。
見上げた先の深澄さんは、片側の口角を上げて意地悪な笑みを浮かべている。