俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

「本当にされると思ったか? 残念でした」
「べっ、別に残念なんかじゃ……!」

 否定しながらも、頬が勝手に熱くなる。赤くなったら余計にからかわれるから嫌なのに、自分で自分の体がコントロールできない。

「強がるなよ。俺からのキスを欲しがらない女はいない」

 腹が立つほど自信過剰な台詞。なのに、この人の口から出ると妙に納得してしまう。

 私は違うけど、深澄さんに見初められたいと願う女性は星の数ほどいるのだろう。

 しかし断じて、私は違う。ドキドキしているのは、突然接近されて驚いたせいだ。

 結婚するなら、深澄さんのこういう意地悪な面にも慣れていかなくちゃいけないのだろうか。今日はお酒が入っているからふざけているだけだよね……?

 暴れる心臓をなんとかなだめつつ、五階に着いて彼の部屋へ向かった。

 玄関は大理石、廊下や部屋の床はすべて真っ白なタイル張りで、天井の照明を鮮やかに反射している。入ってすぐ右手のドアがバスルームに繋がっていて、左側がトイレ。

 奥の左右に洋室が一部屋ずつあり、突きあたりの広い部屋がLDKという間取りだった。

 リビングダイニングの外側には広いバルコニーがあり、ラタンチェアとテーブルのセットが置かれている。手すりの向こうに、海に浮かぶ都心の夜景とレインボーブリッジが見えた。


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