俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
涼野模型店は元々二階建てだった家の一階をリフォームして店舗にしたため、外観は小ぢんまりとしている。
しかし店内には大量の模型やプラモデルの箱が所狭しと並び、ショーケースには父が自作した飛行機や船の模型も多く飾られている。
父の作った模型は売り物ではないのだけれど、時々高額なお金を積んで買っていくマニアもいるから、模型の出来は悪くはないのだろう。
元航空整備士というキャリアがこんなところで生きるなんて、人生って不思議だ。
「ただいまー。お父さん、いる?」
自動ドアから中に入り、奥にいるであろう父に呼び掛ける。店内にお客さんの姿はなかった。
「はいはい、朝帰りの不良娘がやっと帰ってきたか。おかえ――」
突きあたりの通路から姿を現した父は、私の背後に立つ深澄さんを見つけるなりビクッと一歩後退した。
ネクタイこそ締めていないものの、ネイビーのセットアップスーツに清潔感のある白Tシャツを合わせた深澄さんの姿は、さぞ眩しいだろう。