俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
今はお客さんがいるわけでもないのに、そんなに邪険にしなくたっていいじゃない。
思わず父に詰め寄ろうとしたら、母が私の肩にポンと手を乗せた。
「出ましょう光里。ふたりとも時間あるなら、お茶でも付き合ってちょうだい」
にっこり微笑む母に促され、私たちは父に背を向ける。
どうしてわかってくれないんだろう。お父さんだってかつては整備士の仕事に誇りを持っていたはずなのに……。
悶々としつつも、涼野模型店を出る。
深澄さんは車を近所のパーキングに移動させ、三人で徒歩圏内の喫茶店にやってきた。
昭和っぽいレトロな内装の中で、背が高く整った容姿の深澄さんと、華やかな母の存在は少々目立つ。私よりも、母と深澄さんがカップルだと言われた方がしっくりくるかもしれない。
席について注文したコーヒーが運ばれてくると、私と深澄さんの向かいに座っている母が苦笑しながら話しだした。
「あの人のこと、悪く思わないであげてね。自分が逃げ出した航空業界で働く人間が目の前に一気に三人現れたから、意固地になっちゃっただけだと思う。光里に幸せになってほしくないわけじゃないのよ」
「お母さん……」