俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない

 離婚した相手をそんな風に言うなんて、母は大人だ。

「でも、だからってふたりが我慢する必要はないわ。結婚したいならすればいい。深澄くんみたいに優秀でイケメンのパイロットには女性たちからの誘惑も多いでしょうから、早めに首輪つけておかないとね」
「首輪って」

 感心したそばからそう言ってお茶目に笑う母に、思わずつられて笑う。

 深澄さんも控えめにふっと微笑み、母に向けて口を開く。

「実は、そう思っているのは僕の方なんです。運航整備部は男所帯なので、周りの整備士たちを牽制するためにも早く結婚しなければと」
「あらあらご馳走様。愛されてるのねぇ光里」

 とろんと目元を緩めて私たちをからかう母に、あはは……と微妙な笑みを浮かべる。

 まったく深澄さんときたら、よくもまぁぺらぺらと嘘をつけるものである。

 そういえば、昨日のワインバーでも整備部の先輩たちを前に猫をかぶっていた。

 二重人格っぽい人間性はちょっと疑いたくなるけれど、契約結婚の相手としてはむしろやりやすいのかもしれない。

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