俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
喫茶店の前で母と別れ深澄さんとふたりきりになると、私は彼を見上げて言った。
「私も深澄さんのご両親にご挨拶しないとですね。ご両親はなんの仕事をされてるんですか?」
「父は航空専門学校の校長。母も同じ学校で講師をしてる」
「ということは、もしかして前職は航空業界ですか?」
私の通っていた専門学校でも、講師は航空業界である程度経験を積んだか、もしくは現役で活躍しており出向で講師の仕事をしているという先生が多かった。
「ああ。父は元パイロット、母は元グランドスタッフだ」
「やっぱり……! 深澄さんは航空業界のサラブレッドだったんですね」
「お前も似たようなものだろ」
「いえいえ、うちの父は今やただの模型好きのおじさんなので、やっぱり違いますよ」
現役を退いてからも未来の航空業界を担う若手を育てる仕事をしているなんて、素敵な人たちなんだろうな。
私たちの関係をあまり突っ込まれたら困るけれど、話をするのは単純に楽しみだ。
「先に婚姻届にサインをもらってくるから、その時に予定を聞いてみる。お前はとりあえず荷物まとめて引っ越してこい。これ、鍵な。コンシェルジュには話をつけておくから」