俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
深澄さんはズボンのポケットからキーケースを取り、いくつかある鍵の中から重厚なディンプルキーをはずし、私の手に乗せる。
「言っておくが、女に合鍵を渡すのなんて初めてなんだ。くれぐれも悪用しないように」
「し、しませんよ! 厳重に管理します……」
小さな鍵をギュッと胸に抱いて神妙に頷く。
確かに、この鍵を失くしたりしたら大変だ。深澄さんに憧れる女性たちなら、喉から手が出るほど欲しいだろうから。
「じゃ、最後に連絡先教えろ」
「あっ、そういえばまだでしたね」
お互いスマホを突き合わせて、電話番号とメッセージアプリのIDを交換する。
その時、ふとキーンというエンジン音が聞こえたので空を仰ぐと、夏の晴れた空を一機の飛行機が横切っていた。
あの大きさは長距離用。海外に飛んでいくんだな、きっと。
「いつ見てもカッコいい……」
そう呟いた瞬間、不機嫌そうな深澄さんの顔が私の視界に入ってきて、空が見えなくなる。
「ちょっと、せっかく飛行機を見てたのに――」
文句を言っている途中で深澄さんの顔が迫ってきて、えっ?と思っているうちに、唇にやわらかい感触が触れた。