俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
驚きで見開いた目に映るのは、長い睫毛を伏せた深澄さんのどアップ。
飛行機の音は遠ざかっていき、代わりに自分の鼓動が耳の奥でうるさく鳴り響く。
こ、これって……キス?
わけがわからず息を止め体を硬直させていると、深澄さんがそっと唇を離した。
私はぷはっと息を吐き、今のはなんですかと尋ねるように彼を見る。
「目の前に夫となる男がいるのに、よそ見をするからだ」
「え……?」
そんな説明ではわけがわからないのに、深澄さんはふいっと顔を逸らしてこの場を離れようと歩きだす。
「あ、あのっ!」
引き留める私の声も、完全無視。
彼は背を向けたままひらひらと手を振って、車を停めたパーキングの方へと向かって行く。
「なんなの……」
思わずそう呟いてみても、戸惑いは膨らむばかり。
火傷をしたようにひりひりする唇に指先で触れ、私はしばらくその場で呆然としていた。