俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
気になる整備士の彼女――side鷹矢
涼野の実家で図らずもご両親と顔を会わせた翌日は、午後から国際線の乗務だった。
搭乗便の一時間半前に空港に到着し、着替えを済ませてからブリーフィングを行うオフィスに到着する。
すると、俺の姿を見つけたとある機長が不満げな顔をして近づいてきた。
「ちょい深澄、お前のせいで俺がCA軍団に文句言われたんだけど」
肩に四本ラインの肩章が入ったシャツを纏い、少々長めの髪を後ろに流した垂れ目のこの彼は、若手機長の服部夕飛さん。
年は三つ上だが、いつもこうして気軽に話しかけてくるので、機長としての威厳のようなものはあまり感じない。
しかし、コックピットでの彼は別人。ベテラン機長に引けを取らない冷静さで、どんなイレギュラーにも涼しい顔で対処する。
彼とフライトが一緒になった日は、いつも彼の操縦技術、そして緊急時の対応を細かに記憶し、自分の糧としていた。
「文句……心当たりありませんね」
しれっと答えてパソコンを開き、気象情報や滑走路の使用状況、燃料や積載物のデータを確認する。
これから別の機長に挨拶をしてフライトプランを話し合うため、服部さんの雑談に付き合っている暇はなかった。