俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「よく言うよ。CA軍団、超~おかんむりだったぞ。気まぐれで整備士の女の子に手を出すなんて、いくらお前でも趣味が悪いって」
「気まぐれじゃありません。結婚するので」
「はぁ、そりゃおめでとさん……って、えっ?」
呆然とする服部さんを無視して立ち上がる。ほぼ同時に、今日のフライトを共に担当するベテランの亘機長がオフィスに入ってきたので、彼のもとへ向かった。
今回担当する便は、羽田発、ロサンゼルス行き。到着後は現地に二泊ステイし、羽田に帰ってくるのは三日後になる。
俺のように国際線と国内線の両方を担当するパイロットのスケジュールは、かなり不規則。今まで付き合った恋人とも、俺の勤務体系に不満が溜まって彼女の方が耐えられなくなるというパターンが多かった。
自然と結婚からも縁遠くなり、三十を過ぎた頃からしびれを切らした両親に見合いを勧められては断っている。
一度会っただけの女性と結婚するなんてごめんだし、なにより俺には、ここ半年ほど気になる相手がいた。
それが、運航整備部の涼野光里である。