俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「あんまりガツガツしないでくださいよ、恥ずかしい」
向かい側に座るふたつ年上の先輩、石狩さんのすさまじい食べっぷりに、私は思わず眉をひそめた。
お腹に溜まる料理も注文してあるのに、到着するのが待てないようだ。
「腹減ってるんだからしょうがないだろ。早くしないと涼野の分なくなるぞ」
「いえ、別に自分の取り分の心配をしているわけではないです」
「あ、そ。じゃ遠慮しなくていいな」
冷たく返しても意に介さずに食べ進める石狩さん。トレードマークはサイドに軽く流したリーゼントヘアと細い眉で、高校時代はいわゆるヤンキーだったそう。
元々のバイク好きが高じて、もっと巨大な乗り物を整備してみたいと思うようになり、航空整備士を志望。
同時にヤンキーも卒業し、今では社内で一位二位を争う勉強家。口調や動作は粗野だけれど仕事は懇切丁寧なので、整備士としては尊敬している。
「涼野さん、石狩に取られる前にどうぞ」
石狩さんの隣に座る色白で細面の先輩、信濃さんが、料理を少量ずつ取り分けた皿を差し出してくれた。
前髪をセンターで分けたサラサラとした黒髪、いつも柔和な笑顔でいるのが印象的な彼は、石狩さんと同期かつよき相棒でもある。