俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
車内をキョロキョロして首を傾げる涼野。その仕草もまたかわいくて、こいつのことなら永遠に眺めていられるなと、頭の隅で思う。
「意味はあるだろ。日頃からこういうスキンシップに慣れておけば、人に見られている時の演技にも説得力が増す」
「……は、はぁ」
強引にこじつけた俺の理論を聞き、涼野はわかったようなわかっていないような、微妙な顔をする。
ま、これから嫌でもわからせてやる。強引に手を繋いだり不意打ちのキスをしたり、契約結婚だなんて回りくどいアプローチをしたりするのは、彼女の心を手に入れるために撒いた種のようなもの。
種は成長していく過程で蔓のように彼女の心に絡みつき、気が付いた時にはもう俺から逃げられない。
少々サディスティックな思考を巡らせながら、無造作に握っていた彼女の手にするりと指を絡めて握り直す。
緊張で身を硬くし俯く涼野だが、その耳は真っ赤。
いつかそこに噛み付いて啼かせたいと思いながらも、今はまだ手を握るだけでなんとか耐えるのだった。