俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
お芝居の愛に惑わされ
「こんな色、私に似合うでしょうか?」
夜勤明けにやってきた深澄さんのマンション。そのリビングで、お土産の中にあったリキッドタイプの口紅を手にした私は思わず呟いた。
ラズベリーのように鮮やかな、赤とピンクの中間色。見ている分には綺麗だけれど、自分に似合うとは思えない。
それに、整備の仕事は汗だくになるので、メイクは色のついた日焼け止めをサラッと肌に塗って眉毛を書くくらいのもの。
唇には無色のリップクリームを塗るだけだ。こんなに素敵な口紅を贈ってもらっても、つける機会がない。
「似合うと思ったから買ってきたんだ。試しに塗ってみろよ」
「えっ? でも……」
「モタモタするなら貸せ。俺がやる」
キッチンでお茶を用意してくれていた彼が、木製のトレーを手にリビングにやってくる。
そこにのっていたのは、氷とレモンスライスが涼しげな琥珀色のアイスティー。それに、彼がお土産に買ってきてくれた四種類のカップケーキだ。
美味しそう、と目を奪われていると、トレーをテーブルに置いた深澄さんが私の手から口紅を奪った。
ソファに座る私の目の前に跪き、チップと一体になった蓋を開けて、私の唇をジッと見つめる。