俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
切れ長の目を細めた真剣な眼差しにドキッとして、どこを見たらいいのかわからない。
「上唇は薄めで、下唇だけ厚いんだな……」
誰にともなく呟き、深澄さんがそっとチップを私の唇にのせる。下唇の中央から、ゆっくり口角に向かって移動するチップの感触がくすぐったいやら恥ずかしいやら。
さっさと自分でやってしまえばよかったと、今さらのように後悔した。
「次、上な」
同じ要領で、上唇をなぞるように深澄さんがチップを滑らせる。
暴れまくる心臓の音を聞きながら、早く終わってと祈るように思った。
「……いいな。お前、背は低いけど顔はお母さん似だから、派手な色も似合う」
やがて、深澄さんがそう言って満足げに微笑んだ。
どうせお世辞だろうと思いながらも照れくさくて、深澄さんからふいと顔を背ける。
「絶対嘘です。唇だけ浮いてるんじゃないですか?」
「待ってろ。今、鏡持ってきてやるよ」
口紅の蓋をキュッと締め、深澄さんが立ち上がる。そして壁の木製棚に飾ってあった大き目のテーブルミラーを持ってくると、ローテーブルに置いた。