俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
映り込んだ自分の顔に目を凝らすと、意外にも悪くない。そして、唇だけとはいえこうした鮮やかな色のメイクをすると、自分でも母に似ていると改めて気が付いた。
ちょっとした感動に包まれて鏡を見つめ続けていると、いつの間にかソファの背後に回っていた深澄さんが、背もたれに両手を突いて身を屈め、私の顔のすぐ横で一緒に鏡を覗いていた。
「ほら、美人だろ」
なぜか得意げに言い放つ深澄さん。美人だなんてとんでもないし、それを言うなら深澄さんの方がよっぽど綺麗な顔だ。
ただ、口紅の色が似合うというのは納得だった。
「確かに、変ではないですね……」
「キスしていいか?」
「はっ?」
パッと深澄さんの方を向いたら、思ったより至近距離に彼の顔があって動揺する。鼻先が触れ合いそうな距離で視線が絡み、深澄さんの醸し出す甘いムードに流されそうになる。
しかし唇が重なる寸前でハッと我に返り、首を左右に振った。
「ダメです!」
「……そう言われても、この距離で止まるなんて無理」
深澄さんは囁き声で宣言するなり、強引に私の唇を奪った。