俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
初めての恋の痛み
夜勤明けの後はだいたい二連休。その初日に、深澄さんのマンションへ引っ越すことに決めた。
今日の昼間深澄さんは出社スタンバイだが、何事もなければ午後三時には終わるそう。その後一緒に区役所に行き、婚姻届を出すと決めている。
いよいよ、彼の妻になるときが来たのだ。
「お父さん、私もう行くからね」
午後一時頃、家を出る前に一応店を覗いて父に声を掛けた。
奥のレジカウンター内にいるはずだが返事はなく、夜のうちに荷物を詰めたキャリーケースを引きながら、レジの前まで移動する。
父はやはりカウンターの中に座っていて、私と目を合わせたくないかのように小さなセスナ機の模型を手入れしている。
なにも無視しなくたっていいじゃない。
私だってこんな風に出て行きたくはなかったし、父をひとりにすることだって心配だ。
だって、ずっと一緒に暮らしてきた家族だもの……。
思わず切なくなってきゅっと唇を噛むが、家を出るのはもう決めたこと。
すぐに気を取り直して顔を上げる。
「五日分くらいのおかずは昨日作って冷蔵庫に入れてあるからちゃんと食べてよね。あと、時々電話する」