俺様パイロットは揺るがぬ愛で契約妻を甘く捕らえて逃さない
「捨てるわけないじゃん!」
思いがけないプレゼントに、自然と目頭が熱くなった。
父は驚いたように目を丸くするが、手の中のセスナ機を見つめているとますます目が潤んできて、鼻がぐすっと鳴ってしまう。
「ずっと怒ってるんだと思ってたから……うれしい。今日出て行くの、すごい罪悪感あったんだからね」
こぼれる涙を指先で拭いながら、父に語り掛ける。
父は気まずそうに咳ばらいをし、それからゆっくり私の背中に手を伸ばし、優しく抱き寄せる。
父の服に染みついた、模型の塗料の独特な匂い。それがやけに懐かしくて、また涙腺が緩んでくる。
「ごめんな光里。男ってのはどうしようもないプライドをなかなか捨てられない生き物でな。お前が一生懸命整備士になろうとする姿が眩しすぎて、実の娘なのに嫉妬してたんだ。お前の夢を素直に応援してやれず、長いこと苦しめた」
「お父さん……」
まさか、父が私に嫉妬しているなんて思いもしなかった。
整備士の仕事を応援してくれないのは、母との離婚経験で航空業界に漠然と嫌悪感を抱いているのだとばかり……。