次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!
第58話 暴動
「マリアを追放した時点で、貴女とマリアは親子ではなくなったのです。したがって――」
「だから父親の方から許しをもらったってことね……」
母は、結婚許可証に書かれている父のサインを、忌々しげに見つめていた。
「話が早くて助かります」
「何て憎たらしい……!」
勝ち誇った笑みを浮かべるフィリップの姿は、母にとって屈辱的だったに違いない。
それにもう母には、私たちの結婚に反対する理由を見つけられなかった。
「大変です! 町で暴動が起きました! 現在、宮殿に向かっています!」
「何ですって……!」
突然、勢いよく扉が開かれ、私たちは弾かれたように、声がした方向へ視線を向けた。
恐れていたことが起きてしまった。
「さっさと軍を向かわせなさい!」
フィリップとのやり取りで、相当、怒りが蓄積していたのだろう。母はかなり苛立っていた。
「あの……」
報せを持ってきた者が、立ち去ろうとしている母を止めた。
「まだ何かあるの?」
ますます不機嫌さを増した母に躊躇しながら、
「民衆は、薬をタダで寄越せと口々に叫んでいるそうです……」
と声を震わせながら伝えた。
「薬……?」
「ええ、何でもある町で薬が無料で配られたようで――」
そこまで聞いくと、母はものすごい勢いで私の前にやってきて、私の胸倉を掴み、そのまま激しく揺さぶった。
「マリア! お前という子は、余計なことばかりして!」
フィリップが止めに入ると、母は私を突き飛ばすようにして手を放し、その反動で私は床に叩きつけられた。
「私が暴動を止めに行きます!」
思わず口を突いて出た言葉だった。
「だから父親の方から許しをもらったってことね……」
母は、結婚許可証に書かれている父のサインを、忌々しげに見つめていた。
「話が早くて助かります」
「何て憎たらしい……!」
勝ち誇った笑みを浮かべるフィリップの姿は、母にとって屈辱的だったに違いない。
それにもう母には、私たちの結婚に反対する理由を見つけられなかった。
「大変です! 町で暴動が起きました! 現在、宮殿に向かっています!」
「何ですって……!」
突然、勢いよく扉が開かれ、私たちは弾かれたように、声がした方向へ視線を向けた。
恐れていたことが起きてしまった。
「さっさと軍を向かわせなさい!」
フィリップとのやり取りで、相当、怒りが蓄積していたのだろう。母はかなり苛立っていた。
「あの……」
報せを持ってきた者が、立ち去ろうとしている母を止めた。
「まだ何かあるの?」
ますます不機嫌さを増した母に躊躇しながら、
「民衆は、薬をタダで寄越せと口々に叫んでいるそうです……」
と声を震わせながら伝えた。
「薬……?」
「ええ、何でもある町で薬が無料で配られたようで――」
そこまで聞いくと、母はものすごい勢いで私の前にやってきて、私の胸倉を掴み、そのまま激しく揺さぶった。
「マリア! お前という子は、余計なことばかりして!」
フィリップが止めに入ると、母は私を突き飛ばすようにして手を放し、その反動で私は床に叩きつけられた。
「私が暴動を止めに行きます!」
思わず口を突いて出た言葉だった。