生まれ変わっても、君でいて。
記憶の海を駆け抜ける
■記憶の海を駆け抜ける

 見事な秋晴れとなった土曜日。
 朝起きると、赤沢君から【九時に駅集合でいいんだよね?】というメッセージが届いていたので、私はベッドから飛び起きた。
 まさか本当に、付き合ってくれるなんて……。あれからとくに返信もなかったし、じつは半分来てくれるか疑っていた。
 能力を消したいという赤沢君の思いは、やっぱり本気なんだろう。
 私は細身の黒いパンツに、薄手の白いニットを合わせて、両親に気づかれないようにそっと家を飛び出した。
 
 しまなみ海道のコースについては、私も色々調べた。
 山登りと同じように、初級中級上級と階級があるようだけれど、念のため初級を選んだ。
 初心者向けのコースは、小さな離島の向島(むかいしま)を一周して帰ってくるというコースだ。距離にして約十八キロメートル。小さな島だけど、おしゃれなカフェやパン屋さんもあるらしい。
 ちなみに尾道駅から向島まではフェリーに五分ほど乗船して向かう。一日九便と決まっているため、ばっちり時間も調べておいた。
「白石」
「あ……本当にいた」
 最寄り駅に着くと、本当に赤沢君がいた。
赤沢くんは、黒のマウンテンパーカーに、細身のブラウンのパンツにスニーカーという、いたって普通な格好だけど、クラスメイトと私服で会うのはどうして少しこそばゆい気持になるのだろうか。
「ここから一時間くらいだっけ? 寝過ごさないようにしないとな」
「そうだね。お互い気をつけよう」
 そのまま一緒に約一時間電車を乗り継ぎ、尾道駅に到着した。
 そういえば今気づいたけれど、男子と二人で出かけるのなんて、人生で初めてのことだった。
「駅、こんなに綺麗になったんだね。驚いた」
「え、来たことあるの?」
「まあ、尾道駅はね。大学の友人とラーメン食べるためだけに来たことある」
 今、大学の友人と……ってサラッと言ったけれど、そんなことを言われると赤沢君がものすごく年上に感じてきて緊張してしまう。
「フェリー乗り場、確かこっちだよ。自転車ごと乗せられるって。行こう」
「う、うん」
 おかしいな。ばっちり調べてきたはずなのに、私が案内されてしまっている。
 早歩きな赤沢君の後をついて、私達はレンタサイクルに立ち寄って自転車を借りてから、自転車と一緒に小さなフェリーに乗船した。
「わっ」
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