生まれ変わっても、君でいて。
 けれど、私が「高校生のうちに絶対食べたいと思ってたの!」と付け足すと、「分かったよ」と言ってくれた。
 そう、これは、私の未練、二つ目。
 駅前にある喫茶店『ボムの実』で、ビッグパフェを平らげること。
 結局四人からじゃないと頼めなくて、夢花と約束を果たすことは出来なかったんだ。
「よし、そうとなったらすぐ行こうぜ!」
 意気揚々と荷物をまとめて教室を飛び出した秦野君に続いて、私も教室を出ようとする。
 すると、いきなり後ろから大きな声で「粋! 天音!」と名前を呼ばれた。……祥子とえりなだった。
「何、その四人で遊びに行くの?」
 祥子はすごく驚いた様子で、というか、少し引いたような様子で、そう問いかけてきた。
 私はこくんと頷き、「なんか、ノリでそうなった」と答える。
 すると二人は「ガチ? 仲良しじゃん」と言って笑いだした。
 お調子者キャラの秦野君と仲良くしてるのが、そんなにおかしいだろうか。それとも男子と遊びに行くことが珍しいから?
 どちらにせよ、なんだかちょっと、嫌な感じだ。
「祥子とえりなも来たいの?」
 ずっと黙っていた天音が、突然そんなことを言い出したので、私はすごく驚いた。
 祥子とえりなも「は?」と言ったまま、固まっている。けれど、天音は少しも動じていない。
「来たいなら一緒に行こうよ。待ってるよ」
「いや、そういうんじゃないから……。天音ってほんとさあ……」
 白けた空気を醸し出している二人に耐えられず、私は天音の腕を引っ張った。
「ごめん、待たせてるから行くね。コース決め頑張ってー」
 そう言い残して、私は天音と一緒に逃げるように教室を出た。
 赤沢君と秦野君はすでに自転車置き場に向かっていて、校門で待ち合わせることになっている。
 教室から離れた昇降口まで辿り着くと、私は思わず安堵のため息を漏らしてしまった。
「ごめんね、粋」
「え?」
「じゃあ、行こうか」
 何に対して謝られたのかも分からないまま、今度は私が天音に手を引かれる。
 天音が、色んな感情を押し込めて謝ったような気がしたけれど、私はそれ以上深掘りする勇気がない。
 もしかして天音は、天然をこじらせたわけではなく、あえて空気を読まない発言をしたのだろうか。感じの悪かった二人に反撃するつもりで。
 いや……、考えすぎか。
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