生まれ変わっても、君でいて。
 ぐるぐるとしているうちに自転車を回収し、校門まで辿り着いてしまった。
「あ、秦野君たちいた!」
 明るく手招きしてくれる秦野君を見て、私はそれ以上考えることを止めた。

 『ボムの実』は、よく雑誌にも特集されてるくらいデカ盛りが有名な店だ。
 レトロなログハウスのような見た目で、中に入るとコーヒーの匂いでいっぱいになる。
 床には赤い絨毯が敷かれていて、四人席のガラステーブルがぽつぽつと置かれている。
 意外にも静かな店内に緊張しながらも、私たちは店員さんに人数を伝えた。
 窓際の席に案内されると、すぐにパフェを頼み、ようやくほっと一息つく。
「わー、私も実際に食べるのは初めてだなー。小中学生の時すごく流行ってたから、いつか行きたいなとは思ってたんだけど」
 苺やバナナなどのフルーツが盛りだくさんの、高さ五十センチほどのパフェの写真を見ながら、天音が感動している。
 秦野君もかなりやる気なようで、絶対に完食すると意気込んでいる。
 ふとスマホにメッセージが届いてたことに気づき、開いてみると、そこには目の前にいる赤沢くんからのメッセージが。
【これが未練?】
 シンプルなメッセージに、私は一言【そうです】と返す。
 赤沢君の方に視線を向けると、案の定彼は理解不能という顔をしている。
「お待たせしました、ボムの実スペシャルビッグパフェでございます」
 そうこうしているうちに、店員さんがカートに乗せて慎重に大きなパフェを運んできた。
 立たないと食べられないほど大きいパフェに、さすがの赤沢君も目を見開いている。
「八雲、行けるよな? 俺らなら」
「俺、甘いのそんな得意じゃないけど」
「いやそれは先に言えよ!」
 秦野君のもっともなツッコミが店内に響く。
 細長いスプーンをそれぞれ持った私たちは、その大きさに圧倒されながらも、各々パフェにスプーンを突き刺した。
 私はバニラアイス部分をひとまず口に運ぶ。かなり予想通りの普通のアイスの味だけれど、なぜか少しワクワクしている。
「つめてー! けど、美味い」
 秦野君は頼もしいスピードで食べ進めてくれている。
 私も負けていられないとなぜかムキになり、生クリームの部分、バナナの部分、チョコソースの部分……と、飽きないように色んな場所をちょこちょこ食べ進めた。
< 27 / 130 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop