生まれ変わっても、君でいて。
「粋、赤沢君、じゃあまたここに一時間後集まろう……! ありがとね!」
 自由行動になった途端、二人は小走りで別方向へと消えていってしまった。
 騒々しい二人が急にいなくなり、白石と一緒にぽつんと取り残される。
「どこ行く……? 人すごいけど」
「うーん、とりあえず千本鳥居行くか」
 修学旅行シーズンということもあり、一般の参拝客に混じった高校生で溢れかえっている。
 どこへ行っても人で溢れかえっているのは同じなので、ひとまずメインの観光スポットに行くことを提案すると、白石は「そうだね」と同意した。
「うわー、すごい迫力……!」
 最大の見どころである千本鳥居は、その名の通り朱色の鳥居がずらーっと連なった場所で、じつに壮大な景色だ。圧巻の光景を、参拝客たちはあちこちで撮影している。
 白石も、少し立ち止まって、スマホで何枚か写真を撮っていた。
「願いごとが〝通る〟ように、鳥居の奉納が広まった……だって」
 スマホで調べながら歩いている白石に、俺は「そうなんだ」と平坦な返事をする。
 この鳥居、最初は感動するけど、想像以上に長くてだんだん疲れてくるんだよな。
 山頂まで言っている時間はないので、どこで切り上げるか考えていると、白石が「あのさ」と少し大きな声をあげた。
「さっきの……、えりなと祥子についての話だけど、私そんなにしんどそうに見える?」
 俺と目を合わせずに、少し早歩きで進みながら、白石が問いかけてくる。
 だから俺も、前を向いたまま口を開いた。
「……だってさっき、困ってなかった? ほんとに夜行くの?」
「それは……、行かなくていいなら行きたくないけど」
 言葉を濁す白石に、俺はさらに詰め寄る。
「じゃあ、断ればいい。須藤みたいに」
「できないよ。私が行かなかったら、天音に不満が行くかもしれない」
「なんでそんなに須藤を庇うの? 白石が守る必要なさそうだけど」
 討論しながら、何本もの鳥居が頭上を通り過ぎていく。
 白石が今どんな表情をしているのか気になって、ちらっと横を見ると、彼女は苦しげに歯を食いしばっていた。
 それから、しばらく沈黙が続き、人気が少ない通りに着くと、白石はピタリと歩みを止める。
「夢花に……似てるんだ……、天音は」
 眉間に皺を寄せて、絞りだすように答える白石。
 答えを聞いて、俺はようやく疑問に思っていた全てが腑に落ちた。
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