生まれ変わっても、君でいて。
 俺は何も考えずに彼らの元へ走って駆け寄り、降下する看板の下に飛び込んだ。
 本当に、頭の中はシンプルで、〝助けなければ〟という思いだけが体を動かしていた。
 大けがをするかもとか、下手したら死ぬかもとか、そんなことはどうでもよかった。
「痛っ……」
 思い切り背中に看板の縁が当たって、俺は思わずうめき声をあげた。
 俺は今、白石を守るよう上に覆いかぶさっている。
 秦野は俺に突き飛ばされ、隣で尻もちをついている状況だ。
 白石は最初、何が起きたのか分からないような反応をしていたけれど、力なく倒れ込んだ俺を見て、「え……?」と震えた声を漏らした。
「八雲!!」
 秦野が真っ先に俺の元へ駆け寄ると、周りの生徒たちも「キャー!」と悲鳴をあげ始める。
 頭に響くからやめてくれと思うけれど、声を出す気力がない。
「八雲!! 大丈夫か⁉ なんでこんな……!」
 俺の体をそっと起こして、泣きそうな目を俺に向ける秦野。
 何も頷かずに痛みに耐えていると、秦野は「すぐに教師呼んでくる!!」と言って、とんでもないスピードで走りだした。
 時間差で頭も痛みだしたので、看板のどこかがぶつかったのだろう。
 ふと頭を触ったあとに手の平を見てみると、真っ赤な血がついていた。
「赤……沢君……なんで……」
 やばい。視界がクラクラしてきたな。
 目を見開き今にも壊れてしまいそうな白石を最後に見て、俺はそのまま意識を手離した。

 自分の命を軽んじているつもりはないけれど、周りにはそういう印象を与えているらしい。
 わりとどの人生でも、一度は誰かにそのことを指摘されていた気がする。
 そうは言われても、仕方ない。だって、たとえ死んでも俺の意識はここで一生途絶えるわけではないのだから。
 やり直しのきくゲームみたいに、ただその人生を〝一旦〟終えるだけ。
 命の大切さを何度道徳で学ぼうが、自分ごとにできるわけがない。仕方ない。
「……あ、起きた……?」
 どこからか光が差し込んできたのを感じて、俺はそっと瞼を開けた。
 ここがどこで今何時なのかも分からないまま、白い天井をぼうっと見つめる。
「赤沢君、分かる? ここ、今病院よ。今ご家族の方も呼んでるからね」
「あ、はい……」
 横から声をかけてきたので、首だけ動かして視線を移動させた。
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